becquerelfree’s blog

NO NUKES,ONE LOVE

【第10回 核ゴミに関する政府との会合】報告② 放射性廃棄物の深地層処分に関する技術的質問と回答

【第10回核のごみに関する政府との会合】報告②

 途中でしきりと「早く進行しろ」と主催側進行に対して声がかかりましたが、全体の時間が足りなかったのは、配分や進行がまずかったからではなく、結果、予定時間の15分前には会合を終了しました。会合前日の深夜に突然、経産省が予定より30分早く退室したいと申し出があったそうです。

 北海道からの参加者はすでに移動しており、進行は約束より15分短縮できたものの、切り上げた時間分に対応すべく早く進行したため、主催側が十分にその場の追質問をするなど議論を深めることができませんでした。
 北海道、青森からわざわざ出向き、政府省庁の皆さんとのヒヤリングをしているのですから、今後は急な変更を言い出さないよう、窓口となった社民党の秘書の方にも、特に経産省の方に「そのような急な変更はできない、17:00までいられる担当官をよこしてください」と言っていただかなければなりません。

 また、今回は会合の途中で寿都町の村議会決議を聴くというような北海道の一大事のときであり、常に感心ごとで興味がある質問なのだとしても、再処理・最終処分の技術的、科学的質問を詰め込み過ぎました。今回は質問をお渡しするだけにして、次回詳しく回答を鵜科学野でも良かったかもしれないと考え至りました。(核ゴミ問題研究会 管理人)

 

■ ■ ■

3 深地層処分に関する技術的質問 15:30~16:30

地層処分に関する技術的質問

青森県六ケ所村 高レベル放射性廃棄物に関連した質問

 以下に3,4の回答ダイジェストを記します。

■ ■ ■

(岩手の海を守る会 永田文夫さんからの質問+経産省の回答)
 <永田さんからのコメント>Q&A&C

コロナ禍,本日行われた標記の政府交渉についてライブ中継を午後3時ころから拝見しました。田中さん(※主催者側発言者)には核心を突くわかりやすい,ご意見,再質問があり、会を引き締め問題点を明らかにしていただき、ありがとうございました。

 

■3.深地層処分に関する技術的質問とその答弁についてQ&Aとコメント

※質問3ー①以外は岩手の海を守る会から提出した質問です。

 

質問3-① 高レベル放射性廃棄物を入れる金属容器の経年劣化及び放射線による劣化をどう考えているのか。これまでの会合でも繰り返し、オーバーパックやガラス固化体、キャニスターの経年劣化については話題にしてきましたが、放射線による破損(耐久性)に関するデータを示してください。また、その実証試験はどのような内容のものかについても説明されたい。

答弁(NUMO高橋氏):炭素鋼に1000年分の照射をし調べた。脆化は少なく強度に影響を及ぼすことはなかった。炭素鋼は千年持たないと考えられるが,人工バリアのオーバーパックでおおむね水と接触しないように止めることで設計している。

コメント:1000年分の放射線を一度に炭素鋼に当てて問題ないとすることは,経年放射線劣化の配慮がない試験である。現在可能である条件による試験を基にしたもので「科学的」試験とは言えない。1000年後のことまで現在の科学で推定することは無理であろう。1000年間は持たせるそれ以降はわからない,まさに無責任。データを示さず。

 

質問3-② 経産省への質問 ガラス固化体に含まれるものについて詳細な情報公開を示してください。現在国内で貯蔵中のガラス固化体は何本で,各々の固化体に含まれている放射性核種とその放射能量(Bq)を明らかにすべきではないか。これは100年後,500年後,1000年後,2000年後,8000年後の放射能はどうなるのか。情報公開を徹底するべきではないか。日本原燃㈱は六ヶ所再処理工場で製造した各々のガラス固化体中の放射性核種についてウランやプルトニウム同位体を含め情報公開していないが,そのような固化体を自治体に最終処分させてよいのか。

答弁(エネ庁清宮氏):ガラス固化体は現在2176本貯蔵。海外からの返還固化体については所有者の電力が固化体の仕様を原子力規制委員会へ提出し,公開している。六ケ所については,将来原子炉規制法に より同様の手続きで固化体について出されるのではないか。

 コメント:英仏の返還固化体についてあるように,六ヶ所で製造された固化体について,最終処分地への応募する自治体が出てきている今,情報を公開するべきではないか。このままでは内容不明の固化体を北海道の自治体に最終処分することになるのではないか。これらのことについて回答していない。

 

質問3-③ 経産省への質問 10万年の管理保管が必要として国は深地層処分が最善としていますが、未来世代へどのように埋設物の情報を伝えるのか説明してください。ガラス固化体に含有される,安定同位体(非放射性元素)を含めた元素の含有%の経年変化100年後,500年後,1000年後,2000年後,8000年後について示されたい。数百年,数千年,数万年後の未来世代へしっかりと最終処分されたガラス固化体の含有物について情報を残すことがこのような扱いに困る生成物を作り出した現世代の責任と誠意ではないか。

答弁(経産省氏名不明):最終処分法第17条と第18条に最終処分の記録を保存するようにある。マーカー方法など国際期間で協議されているので対応していきたい。

コメント:最終処分法は2000年に制定されたはず,未来世代に埋設物の情報をどう知らせるか,具体的にまだ決まっていないとは,この20年何をしてきたのだろうか。

 

質問3-④ 経産省への質問 ガラス固化体に含まれる超長半減期のウラン,プルトニウムの総量をお答えください。ウラン・プルトニウムの六ケ所再処理工場の回収目標は98.2%であり,未回収1.8%分のほとんど高レベル廃液に含まれガラス固化されるものと推察される。1年間に処分される使用済みウラン燃料は800トンでありその1.8%14.4トンもがガラス固化体に含まれてきます。ウラン238半減期は44億6800万年,ウラン235は7億380万年, ウラン234は24万5千年であり,最終処分し8000年経過してもほとんど減少しない。最終処分されるガラス固化体中のウラン,プルトニウム放射能総量を示されたい。

 

答弁(経産省氏名不明):我が国ではガラス固化体は日本原燃六ケ所再処理工場から発生する。仕様をもとにNUMOで試算した。ガラス固化体1本について含まれるウラン・プルトニウムの総質量は3kg,30年後の試算ではウラン2☓10^8(10の8乗)ベクレル,プルトニウムは7☓10^12ベクレルである。 

 

コメント:本会の計算では原子炉から取り出し5 年後再処理した廃液によるガラス固化体にはウランは 13.55kg,プルトニウムは0.16kg の合計13.71kg(3.42%)になる。NUMO の計算ではガラス固化体(正味 400kg)に3kg 含むので0.75%と本会の計算と大きく異なっている。日本原燃はウラン・プルトニウムの回 収率を両者とも98.2%として国へ申請している(未回収分がガラス固化体に移行する)。NUMO は古い資 料*にある回収率ウラン99.6%,プルトニウム99.5%で実施しているのではないかと思われる。六ケ所再処 理工場のウラン,プルトニウムの回収率をいくらで計算したのか確認しなければいけない。30 年後のウラ ン,プルトニウム放射能(Bq)についても過小評価と思われる。なぜ両核種の8000 年後の質量と放射能 も示さないのか。固化体中のウランについては5 年後も8 千年後も10 万年後もその濃度%はほとんど減衰 しない,私達の計算ではいずれも3.39%のままであった。国は,誰もがわかるように条件と計算を明確にし 情報公開すべきである,何がどれだけ入っているか情報を示めさないまま最終処分場を決めるようなことは 許されない。(六ケ所再処理工場のアクティブ試験全体におけるウラン・プルトニウムの回収率を現在日本 原燃に質問中だが回答期限10 月29 日が延期され14 日現在未だに回答がない。原燃のデータでは8 割台の 回収率であり,目標を大きく下回り回答できないでいるのではないかと思っている。)

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei2004/sakutei09/siryo13.pdf

 

質問3-⑤ 経産省への質問

ガラス固化体は約8千年で天然ウラン並の有害度まで低減されるとしている根拠を示してください。時間内 に理化学的な説明が不可能な場合は根拠となるデータや文献をお示しください。資源エネルギー庁HP にある「資源エネルギー庁がお答えします!〜核燃サイクルについてよくある3つの質問」のQ1 ではガラス固 化体1本の放射能が天然ウランと同程度の有害レベルまで低減するのにかかる時間は約8千年」と経産省は HP で説明しています。ここで「天然ウラン」とは天然ウラン鉱石のことかそれとも精製された濃縮前のウ ランのことを指しているのか。その「天然ウランと同程度の有害度レベル」とあるが有害度の定義を明確に お示しください。このガラス固化体には,再処理工場で回収できなかったウラン,プルトニウムも含まれて いるはずですが、その核種毎の質量と放射能量、また、約8千年とした計算根拠をお示しください。

 

答弁(エネ庁清宮氏):使用済燃料の直接処分では人体が受ける放射線は10 万年で天然ウラン並になると 試算されている。再処理をするとウラン・プルトニウムが除かれるので8 千年と試算されている。

天然ウランと,ウラン鉱石と区別している,天然ウランは精製後のものだ。有害度とは人体が

受けるシーベルトを評価している。 〃 (エネ庁とざき氏):計算根拠とはどういう内容か,書面を通じていただければ。福島事務所に答えた

い。

 

コメント:ここは田中さんが会でコメントしているように誤魔化しの数値シーベルトではなくベクレルを使 用するほうが正確である。普通の人が多種多様な放射性核種のベクレル数から実効線量係数によりシーベル トを計算しそれを加える計算をすることは容易なことではない。都合の悪い時にシーベルトを持ち出してく るのが推進側の常套手段である。 8 千年とした計算根拠に関して,どういう内容かと聞き返していたが, 誰かがこのような試算をし,それを使用しているはずであり,その計算根拠を示すこと(報告書)である。 報告書を公開していないことがおかしい。

 

以上が本会(岩手の海を守る会)から提出した質問でした。他の項目は省略します。

取り急ぎお知らせしました(正確さに欠けるかもしれません)。

 

*8000 年でウラン鉱石並になるというエネ庁試算について,反論報告書を作成し今,小出裕章さんに見て 頂いているところです。コメントを頂き次第お知らせします。

 

 

4 乾式貯蔵技術の開発と実用に関する質問①②  16:30~17:00

質問4-① 経産省への質問

ガラス固化が当初計画通りにできず、いくら30年以上の時を経て、その経過にある各原発の使用済燃料冷却用プールの老朽が進んだ場合、大変危険であることは予測に易いですが、老朽原発から順番に冷却用プール内の使用済核燃料を乾式貯蔵にし、青森県にこれ以上運び込まないようにするという計画は国として具体実用案を示すべきではないかと考えます。国の方針をお聞かせください。

 回答 エネ庁(矢沢):再処理技術に関する課題(ガラス固化党)は解消しており、プルサーマルなど国が進める核燃サイクルを進めていく。

質問4-②  電気事業連合会原発を保持する大手電力の代表として)と経産省への

乾式貯蔵技術の開発や実際の研究計画案にどのような資金が使われていますか。現在、そのようなプロジェクトはどの程度、国が把握し、指導監督していますか。

発生責任者として電力会社各社は乾式貯蔵の実用可能性についてどのように考え、計画を持っていますか。それぞれの立場でお答えください。

エネ庁回答:東海村は実証済、四国、九州は申請をしている。
今後は原発敷地内外を問わず国の指導の下で進めていく。

 

主催側質問(進行):①乾式貯蔵技術の開発はどの程度進んでいるのか。②資金はどのように出て使われているか ③それらはどのような進捗状況か
エネ庁回答:進捗状況は研究内容による

キャスク 移転費用は各電力会社が負担

 

主催側質問(進行):地域的にあるいは一部電力会社が判断する場合のプロセスは?
原子力規制委員会の監視のもと、電力会社の判断で行える。
エネ庁回答:原子力規制法によって規定されている方法で乾式貯蔵も行われていく。

主催側質問(進行):①ガラス固化はキャスクに入れる途中に固まってしまうと言われていた問題は技術的に本当に解決したのか? ②当初計画通りに再処理できるのか?

エネ庁回答(登崎さん):①日本原燃が社内試験を行い、ガラス固化技術は解決したと報告している。②政府(原子力規制委員会)審査を受けながら今後も行っていく(※当初計画通りかどうかには回答で触れていない)

 

以上

※ひとまずダイジェストを報告しましたが、詳しくは文字お越しをしてから再び報告します。

f:id:emikamassion:20201116180236j:plain

f:id:emikamassion:20201116180257j:plain

会合終了後、会議室の撤収作業中にコロナ感染防止対策万全で記念撮影

 

※今回の会議には主催の窓口、社民党のほか、れいわ新選組、北海道選出議員、共産党立憲民主党議員もご参加いただきました。(残念ながら、自公の北海道選出議員はお一人も来られませんでした。この問題にご興味がない? それとも、北海道に対してさほど愛郷精神がないためでしょうか。)

 原子力のような大変シリアスな問題を進める場合にさえ住民意思を反映させず、「肌感覚」などという言葉で独自の判断を住民の意思とし、強引に計画を進めようとする町長の強行な姿勢に対し、住民側も「住民権利の侵害」という実害を許さないという確固たる態度が必要であり、北海道民としては、2つの自治体に対し、北海道条例が傷つけられたことに抗議することも、今後、「身勝手な地方自治体首長を生み出さないという強い意思を伝えるための措置」であると考えます。

 

 北海道には北海道条例がありますが、「難い」なんて中途半端なことを言わず、「受け入れない!」というより硬い、まっすぐな表現にすべきでした。

www.pref.hokkaido.lg.jp

 

北海道における特定放射性廃棄物に関する条例

 

 北海道は、豊かで優れた自然環境に恵まれた地域であり、この自然の恵みの下に、北国らしい生活を営み、個性ある文化を育んできた。

 一方、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理後に生ずる特定放射性廃棄物は、長期間にわたり人間環境から隔離する必要がある。現時点では、その処分方法の信頼性向上に積極的に取り組んでいるが、処分方法が十分確立されておらず、その試験研究の一層の推進が求められており、その処分方法の試験研究を進める必要がある。

 私たちは、健康で文化的な生活を営むため、現在と将来の世代が共有する限りある環境を、将来に引き継ぐ責務を有しており、こうした状況の下では、特定放射性廃棄物の持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れ難いことを宣言する。(平成12年10月24日)