規制委の泊原発断層評価は「誤り」小野北大名誉教授
原子力規制委員会による昨年11月の北海道電力泊原発(後志管内泊村)の現地調査で、北電が示した敷地内のF―1断層が活断層ではないとする根拠の一部を規制委が認めたことについて、小野有五・北大名誉教授(717)=自然地理学=は21日、道庁内で記者会見を開き、「規制委は決定的な証拠を見逃している」と主張、規制委の評価は誤りとの考えを示した。
断層は、地層と地層の境界まで先端部がぴったり届い、その上に新たな地層ができていれば上の地層よりも古い時期にできたと推定できる。北電は敷地内の北側で行った開削調査の結果、F―1断層と同時期に動いたとみられる小断層2本が「33万年前より古い上部の地層の境界まで、ぴったりと達している」と主張。規制委の石渡明委員も、この主張を大筋で認めた。
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小野有五先生が主張
https://www.asahi.com/articles/ASN1P46QPN1PIIPE010.html…
北海道電力泊原子力発電所(北海道泊村)の敷地内の断層をめぐり、道内の学識経験者らでつくる「行動する市民科学者の会・北海道」は21日、「北電は都合の悪い事実を無視している。間違いなく活断層だ」とする見解を発表した。北電の主張を真っ向から否定するもので、原子力規制委員会の審査に影響する可能性がある。(長崎潤一郎)
同会の小野有五・北海道大名誉教授が道庁で記者会見した。月刊誌「科学」(岩波書店)2月号に論文を寄稿し、原子力規制委にも情報提供するという。
東日本大震災後の新規制基準では、約12万〜13万年前以降に動いた断層を活断層とみなす。泊原発の敷地内には11本の断層が確認されているが、このうちの一つ「F―1」断層が審査の焦点になっている。
北電は、F1断層と同じ時期に動いた小断層の上部にある地層の年代を示すことで、F1断層は活断層ではないと証明しようとしている。具体的には、小断層は33万年前より古い地層にズレなどの変化を与えていないため、小断層もF1断層も、この地層ができる前に動いている。つまり活断層ではないという主張だ。
これに対し小野氏は会見で「北電は自らの主張に都合の悪い事実を隠している」と批判した。小断層の上部の地層が大きく乱れていることから、土壌が凍結と融解を繰り返す「周氷河作用」が起きたと指摘。地層の境界面で小断層がピタリと止まったまま残ることはむしろ不自然自然自然だとして、「小断層やF1断層は、上部の地層が形成された後に動いた」と主張する。
さらに、北電が公表している地層のCT画像を詳しく見ると、実際には小断層は上部の地層の内部まで延びていると指摘。上部の地層ができた後に断層が動いた「決定的これが事実なら、小断層がいつ動いたかは特定できず、約12万〜13万年前以降に動いたことも否定できないため、「活断層」になるとしている。新規制基準では、活断層が原子炉など重要施設の直下にあれば再稼働できない。F1断層は直下にないとされるが、地震に備えて大幅な耐震工事が必要となる。
泊原発敷地内の断層をめぐっては、北電は当初、火山灰の年代をもとに活断層ではないと訴えたが、周辺の地層から火山灰が見つからずに断念。その後の主張も認められず、規制委は昨年2月の審査会合で、「活断層の可能性を否定できない」との見解を示した。これを受け、北電は敷地内で斜面を切りひらく開削調査を新たに実施し、現在の主張に転換した。
規制委の石渡明委員(元日本地質学会長)は昨年11月に泊原発の現地調査を実施し、北電の主張の妥当性を評価しつつ、「まだ不足な点がある」として追加北電は2月下旬に提出する予定で、その後の審査会合で結論が出る見通しだ。