becquerelfree’s blog

NO NUKES,ONE LOVE

G7環境大臣会合共同声明・改ざんされた日本語訳の撤回を求める申入書 改訂版

環境大臣   西村明宏 殿

経済産業大臣 西村康稔殿

G7環境大臣会合による汚染水海洋放出・汚染土再利用の承認を装う

改ざんされた共同声明「日本語訳」を撤回し、

汚染水海洋放出・汚染土再利用を直ちに停止するよう申し入れます

4月15・16日に札幌で行われたG7気候・エネルギー・環境大臣会合終了後の記者会見で「(西村康稔経産大臣は)『処理水の海洋放出を含む廃炉の着実な進展、そして、科学的根拠に基づく我が国の透明性のある取り組みが歓迎される』と説明。隣で聞いていたドイツのレムケ環境・原子力安全相は『原発事故後、東電や日本政府が努力してきたことには敬意を払う。しかし、処理水の放出を歓迎するということはできない』と反発した。

西村氏は会見後、報道陣に『私のちょっと言い間違えで、『歓迎』に全部含めてしまった』と釈明。処理水の放出については『IAEAの独立したレビューが支持された』と訂正した」と報じられています(4月16日 朝日新聞デジタル*1)。

ところが、環境省ウェブページで公開された4月16日付「G7気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケ」の日本語訳*2の71項「福島第一原子力発電所の事故対応」の2番目の文章に、「我々は、同発電所廃炉及び福島の復興に不可欠である多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が・・」と書かれています(赤字は引用者による)。

記者会見の席上で「処理水の放出を歓迎するということはできない」と明言し西村経産大臣を公然と批判したドイツのレムケ環境・原子力安全相が同席していた会議で、「多核種除去システム(ALPS)処理水の放出が廃炉及び福島の復興に不可欠」などという共同声明が合意されるはずはありません。

対応する英文*3には、We support the IAEA’s independent review to ensure that the discharge of ・・・ (ALPS) treated water will be conducted consistent with IAEA safety standards and international law and that it will not cause any harm to humans and the environment, which is essential for the decommissioning of the site and the reconstruction of Fukushima.と書かれています。骨組を訳すと「我々はALPS処理水の放出がIAEA基準や国際法にそって行われ、人や環境に害を及ぼさないことを確実に確認するためにIAEAのレビューを支持する。そして人や環境に害を及ぼさないことは廃炉と福島復興に不可欠である」ということです。「廃炉と福島の復興に不可欠」と書かれているのは「人や環境に害を及ぼさないこと」なのに、「日本語訳」では「ALPS処理水の放出が『廃炉と福島の復興に不可欠』」となっているのです。これは明らかに改ざんです。whichの前にカンマ(,)がある関係代名詞の非制限的用法なので、whichがthatで始まる2つの節の両方((ALPS)処理水の放出がIAEA基準などにそって行われること+人体や環境にいかなる害も及ぼさないこと)を指す可能性もありますが、「日本語訳」が改ざんであることに変わりはありません。

改ざんはもう1箇所あります。「日本語訳」71項の最後に「我々は、オープンで透明性をもって、国際社会との緊密なコニュニケーションをとりながら進められているこれらの取組を継続するよう、日本に奨励する。」となっています。「これらの取組」とは「除去土壌の再生利用と最終処分」です。

元の英文は We encourage Japan to proceed with these ongoing initiatives in an open and transparent manner, in close communication with the international community. です。「我々は、日本が、これらの進行中の取り組みを、オープンかつ透明に、国際社会と緊密に連絡をとりながら行うよう奨励する。」が本来の訳です。例えばin an open mannerは通常、名詞以外の動詞、形容詞、副詞などを修飾する副詞句です*4。「日本語訳」は副詞句である in an open and transparent manner, in close communication with・・を、initiative(取組)という名詞を修飾する形容詞句として翻訳し、「除去土壌の再生利用と最終処分」が「オープンで透明性をもって、国際社会との緊密なコニュニケーションをとりながら進められている」と認められたかのように装っています。これも明らかな改ざんです。

 

4.16記者会見における西村経産大臣の発言は「言い間違い」ではなく「日本語訳」に沿ったものであり、「訂正」してもなお、2箇所が改ざんされています。

2日間にわたる議論の末に採択された合意文書を、勝手に改ざんして発表するとは、実に失礼極まりないことです。これでは日本政治は外国からも、国内でも、信用されません。汚染水の海洋放出や汚染土の再利用も、偽りの安全宣伝をもとに進められてきました。

汚染水・汚染土問題を担当し、G7環境大臣会合に出席された両大臣が、「日本語訳」の改ざんを認め、撤回するとともに、汚染水の海洋放出および汚染土の再利用を直ちに停止するよう、申し入れます。5月18日正午までに連絡先メールアドレスにご回答ください。

2023年5月12日

放射線被ばくを学習する会

連絡先

                       (連名団体)

*1 https://digital.asahi.com/articles/ASR4J51RRR4JULFA004.html 

*2 https://www.env.go.jp/content/000127829.pdf

*3 https://www.env.go.jp/content/000127828.pdf

*4 英文法用語事典

https://eow.alc.co.jp/search?q=in+open+manner