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泊原発の廃炉をめざす会ニュース39号 核ゴミ最終処分の問題点

泊原発廃炉をめざす会ニュース 39号に核ゴミ問題に関する記事が掲載されました。以下に4-5ページを転載します。

tomari816.com

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社会科学的知見から観る核ごみ最終処分の問題点 ①

                         核ゴミ問題担当世話人 マシオン恵美香

 

国は現在、「第6次エネルギーギー基本計画」の改訂にかかる政府案に対し、国民の意見を募集している。(募集期間9月3日~10月4日/資源エネルギー庁長官官房総務課)

 幌延地層処分研究計画の9年もの延長に続き、寿都・神恵内が高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定にかかる文献調査への応募により、核ゴミ最終処分の必要性、技術的安全性、合理性について理科学的知見から反論する識者の意見を多く目にするようになった。

本稿では核ゴミの最終処分問題を社会的要件(法律・政策・経済)の知見から考察する。

 

「核ゴミ最終処分は深地層への埋設が最善か」見極める議論の必要性

■処分地選定議論の不健全さ アンフェアな核ゴミ最終処分計画の進め方

 

神奈川工科大学 藤村陽教授は以下のように論旨の欠落を指摘している。

  ・高レベル放射性廃棄物は量が少ない・待てば放射能が減る

  ・原発を停止しても現に(放射性廃棄物は)存在している

  ・ゴミの量を減らす(原発を稼働しない)という選択が論点にない

  ・原子力の恩恵を享受した世代が解決すべきかどうか?!

次世代に押し付け強引で短絡的に結論付けている点が理不尽

・推進側の主張ばかりが法制化される                        

 

国はガラス固化体をキャニスターに封入し、重く体積の大きいオーバーパックを地中に埋設投棄するとしているが、使用済核燃料の移送、加工(再処理・ガラス固化)、封入、埋設、保管までのどの時点においても、万が一の際の賠償責任範囲など大事なことは法律上、一切、規定・確約していない。一方、住民意志を意図して反映せず、深地層処分が最善であるとして処分地選定だけを最優先に進めている。一足飛びに10万年という遥か未来の先まで核ゴミを安全に管理保管(あるいは埋め捨て)出来るという推進論に踏襲し続けたあまり、今在る私たちが使用済核燃料によって補償なく危険な目に遭いかねないこと、非民主的手続きによって、「住民権利を侵害され続けているいう重大な実害」は置き去りにされている。話題に上がった3自治体がすべて北海道内であることから、「核ゴミははどのみちいずれ北海道のどこかに押し付けられる」などと諦め受身になる前に、いま一度、原子力全般についての公論形成プロセスを見直そう。

  • 法律・国の政策から検証する
  •  
  • 「特定放射性廃棄物に関する法律」は、事業者や国の責任条件を縛るものなのであり、これによって国民の負担や責務を押し付けられるべきでない。あくまで原子力発電事業の受益者は電力会社。

法の細則は、時の事情に拠って書き換えられる。(賠償責任範囲、原子力警戒予備範囲なども、平成26年の改訂時に坑道入口周辺50mの規定さえ削除された)

※山本行雄弁護士は著書「10万年の大うそ」の中で「核ゴミ最終処分地選定手順に法的根拠は全くない。このままでは法に拠らない行政の暴走を許すことになる」と指摘している。

本年9月29日の原子力規制委員会定例会では廃炉によって生じるL1~L3までの低レベル放射性廃棄物の規制基準が決められた。これにより処分場の条件(総量見通し、深度、期間など)がすべて整備され、処分場の被ばく線量は国際基準に併せて年0.3㎜シーベルト以下に抑える必要があるとしている。

室蘭市への福島由来の放射性PCB廃棄物中間貯蔵問題などは廃炉に拠るものでなく指定廃棄物ではあるが、高レベル放射性廃棄物以外の区分を道内に持ち込む先例となりかねない。重要土地調査規制法など他の法律併用、乱用が懸念される。

  • 「処分地選定にかかる文献調査に応募すると二度と降りられない」という表現は妥当でない。高知県東洋町の前例に習って住民が強い意志を示せば、撤回することは可能。(橋本大二郎高知県知事講演/本年7月寿都町)※ただし、現行法では応募の撤回や、概要調査以降の可逆性・回収可能性に関する記述が不十分で、判断は文献調査からでなく概要調査以降に自治体首長(知事)に託されている。「住民意志の示し方、汲み取り方、判断は自治体に任せている」(経産省
  • 現行法上、かならずしも「使用済核燃料の全量を再処理しなければならない」とまでは規定されていない。※法の立て付け上、事業者が使用済核燃料のまま管理保管、深地層処分でなく乾式貯蔵など別の方法に決めれば可能(経産省会合2018年2月)
  • 学術会議の提言(核ゴミ暫定保管、総量管理、他処分方法の検討を含む公論形成)

※核ゴミの未来を決めることで、かえって原発依存状態を継続することになりかねない可能性を示唆。

  • 埋め捨ては違憲? 原子力事業全般は住民が安全で健康に生きる権利を侵害するもの。とりわけ、核ゴミ最終処分については、未来のどの地域にも受益者が存在しないことから、将来の国民にとって議論不可能。フェアでなく、完全に一方的な押し付けとすれば権利侵害でしかない。

 

【最終処分を担う存在の不確実性】 ※最終処分事業者NUMO(原子力発電環境整備機構)の責任

法律に掲げられている条件が常にすべて現実に即しているか、実現可能か、実現できなかった際の事業者の社会的制裁措置規定(刑事罰や罰則金など)も現時点でNUMOに課せられていない。現に法律に記された通り核ゴミが最終処分された事は国内では過去に一例もなく、目標を指した状態のまま。

「深地層処分に関する過酷想定(最悪シナリオ)は無い」(近藤駿介NUMO代表理事 2018年発言)

 

最終処分事業を担う事業者NUMOについて、権利・義務・責任範囲が明確でなく、以下のような法理上のご都合主義的な逃げ道が用意されている。

雑則 第七十四条(業務困難の場合の措置)

 

1「機構が経済事情の著しい変動、天災その他の事由により最終処分業務の全部又はその大部分を行うことができなくなった場合における当該最終処分業務の全部又は一部の引継ぎ、当該機構の権利及び義務の取扱いその他の必要な措置については、別に法律で定める。

2 前項の場合において、同項の法律に基づく必要な措置がとられるまでの間は、経済産業大臣が、政令で定めるところにより、当該最終処分業務の全部又は一部を行うものとする。」 

国はそのときの事情でエネルギー計画全体や即した法律を改訂する。このため、最終処分に関する細則(基準や閾値、配慮の範囲、責任所在を含む)や再処理に見通しがつかずガラス固化できなければ、直接処分で埋め捨てる、あるいは事業者が放置したまま責任放棄も懸念される。

指摘のように最終処分法は穴だらけであることことから、「主権者である国民の求めによって法律を改善(廃止、変更、新設)できる可能性もゼロではない」と希望を持ちたい。       

※社会科学的知見から観る核ごみ最終処分の問題点②③ 政策・経済に続く

 

<出典・参考委資料> 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(平成十二年法律第百十七号・平成年改正)

「システム統合を反映した限界費用の試算」(総合資源エネルギー調査会発電コスト検証ワーキンググループ第5回会)2021年4月26日東京大学生産技術研究所 荻本和彦・本エネルギー経済研究所 松尾雄司)

原子力市民委員会『原発を温存する新たな電力市場の問題点』(2020年5月)、『原発ゼロ社会への道 2017 ― 脱原子力政策の実現のために』(2017年12月)、新外交イニシアチヴ「第6次エネルギー基本計画に対するNDの意見」

原子力資料情報室「コストワーキンググループが新試算 ついに」(本年8月1日)、第6次エネルギー基本計画素案に見る 危険な原子力政策(本年9月2日)、冊子「どうする?原発のゴミ」、「高レベル放射性廃棄物」はふやさない、埋めない(地学団体研究会2019年7月31日)、「再び作られる原発安価論」(大島堅一・松久保肇「世界8月号」本年8月1日)、山本行雄「10万年の大そ」(2020年2月22日)、高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分をめぐる 社会的受容性と可逆性 松岡 俊二(2019年9月6日)

「高レベル放射性廃棄物地層処分問題」(神奈川工科大学 藤村陽「科学」2007年年11月号)

 

泊原発廃炉をめざす会

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以上